プライズゲームでもクレーンゲームでもない

有限会社楠野製作所

プライズゲームでもクレーンゲームでもない

スタッフブログ

2019/08/04 プライズゲームでもクレーンゲームでもない

開発者 楠野博美

地方博覧会が華やかかりし頃、少しダイナミックな(ほとんどが集団で遊ぶ)ゲーム、

例えば皿割り、カンアレイ、水鉄砲、バスケットボールなどの、

幅広のカーニバルゲームが幅を利かす中で、異端児的な上下に3.5Mの長さを持った

「ハンマーゴング」というカーニバルゲームを作る依頼を受けて、

製作に取り掛かったことがあります。


木材と鉄を加工して組み上げればいいだけの、カンタンゲームと
思って気軽に引き受けてしまいましたが、

現実はそんなに甘くはありませんでした。

・まず一番高いところに取り付ける鉄製のゴングの呼び方が

分かりませんでした。ネットで調べられるような時代じゃなかったし、

板金加工所に電話を幾つか掛けてみて、それが鏡 板と呼ばれるものと

分かるまで時間が掛かりました。


・ハンマーも、杭打ち用の大槌であることが間もなく判明しました。

 

・シーソー構造の端の一旦をハンマーで打撃すると、反対側の先端に固定された30mm

の鉄製の板に弾かれて、レールを抱えるように上昇する鉄の塊を、一体何と呼んだらい

いのか分からず、仕方がないので、最後までタマと呼んでいました。

・シーソー運動の支点軸になっている金具は支点金具と呼ぶようにしました。

 

 

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最初カンタンそうに見えたとおり、試作品はこれといった問題もなく楽に作れました。

ところが、試しに打撃用ゴムをハンマーでガツンと叩いて、先端の金属板で

タマを打ち上げたところ、思いのほか摩擦抵抗によって上昇しませんでした。

何とかタマの内側をヤスリで磨き、スムーズに上昇するようにしましたが、

次には先端部固定板が打撃を繰り返すうちに、下に曲がってお辞儀をするように

なりました。

「そうか、なまくら()のままでは軟らか過ぎるのか。」と反省して、

固くするために鉄工所に持ち込んで焼きを入れてもらいました。

そして今度こそ焼きを入れた打ち上げ板が、タマを勢いよく

上に弾くのかと期待した瞬間でした。「パッキーン」と音を発して、

無残にも折れました。これはかなりショッキングな事件でした。

「焼きを入れて固くしたら、折れやすくなってしまった。」しばらくこの状態から

抜け出す解決策が見いだせないままでいると、当社を覗きに来た金物屋さんが、

「鋼材を使ったら簡単には折れませんよ。」と教えてくれたおかげで、

あっけなく問題は解消しました。そのおかげをもって、ついに試作機が

誕生しました。それに商品化すると、割と好評でした。

しかしながら、このハンマーゴングのように予期せぬ問題が良く起きる機械は、

商品になっても、往々にして何らかのトラブルに見舞われるもので、

高島屋屋上のビアガーデンに設置したところ、酔客にウケて好評を博したのですが、

ハンマーを自分の足に落としたり、ハンマーをゴム部に当てず空振りして、

肩を外すお客さんが救急車で運ばれることがよくありました。

また、打撃音や振動を抑えるために、畳を機械の下に敷いたら、

それらが濡れて腐り、異臭が漂ったりしました。

それでも何とか続けていると、階下の衣料品売り場から、

「振動と音がうるさくて、お客さんが落ち着かない様子です。」との声が上がり、

ついに好評のイベントは幕を閉じました。

 

それからというもの、楠野では、ハンマーゴングは頼まれても一切作らなくなりました。

プライズゲーム・バーバーカットやファンファンタジアを作っているほうが

楽ということです。

 

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