プライズゲームでもクレーンゲームでもない
開発者 楠野博美
地方博覧会が華やかかりし頃、少しダイナミックな(ほとんどが集団で遊ぶ)ゲーム、
例えば皿割り、カンアレイ、水鉄砲、バスケットボールなどの、
幅広のカーニバルゲームが幅を利かす中で、異端児的な上下に3.5Mの長さを持った
「ハンマーゴング」というカーニバルゲームを作る依頼を受けて、
製作に取り掛かったことがあります。
木材と鉄を加工して組み上げればいいだけの、カンタンゲームと 思って気軽に引き受けてしまいましたが、
現実はそんなに甘くはありませんでした。
・まず一番高いところに取り付ける鉄製のゴングの呼び方が
分かりませんでした。ネットで調べられるような時代じゃなかったし、
板金加工所に電話を幾つか掛けてみて、それが鏡 板と呼ばれるものと
分かるまで時間が掛かりました。
・ハンマーも、杭打ち用の大槌であることが間もなく判明しました。
・シーソー構造の端の一旦をハンマーで打撃すると、反対側の先端に固定された30mm幅
の鉄製の板に弾かれて、レールを抱えるように上昇する鉄の塊を、一体何と呼んだらい
いのか分からず、仕方がないので、最後までタマと呼んでいました。
・シーソー運動の支点軸になっている金具は支点金具と呼ぶようにしました。
最初カンタンそうに見えたとおり、試作品はこれといった問題もなく楽に作れました。
ところが、試しに打撃用ゴムをハンマーでガツンと叩いて、先端の金属板で
タマを打ち上げたところ、思いのほか摩擦抵抗によって上昇しませんでした。
何とかタマの内側をヤスリで磨き、スムーズに上昇するようにしましたが、
次には先端部固定板が打撃を繰り返すうちに、下に曲がってお辞儀をするように
なりました。
「そうか、なまくら(鈍)のままでは軟らか過ぎるのか。」と反省して、
固くするために鉄工所に持ち込んで焼きを入れてもらいました。
そして今度こそ焼きを入れた打ち上げ板が、タマを勢いよく
上に弾くのかと期待した瞬間でした。「パッキーン」と音を発して、
無残にも折れました。これはかなりショッキングな事件でした。
「焼きを入れて固くしたら、折れやすくなってしまった。」しばらくこの状態から
抜け出す解決策が見いだせないままでいると、当社を覗きに来た金物屋さんが、
「鋼材を使ったら簡単には折れませんよ。」と教えてくれたおかげで、
あっけなく問題は解消しました。そのおかげをもって、ついに試作機が
誕生しました。それに商品化すると、割と好評でした。
しかしながら、このハンマーゴングのように予期せぬ問題が良く起きる機械は、
商品になっても、往々にして何らかのトラブルに見舞われるもので、
高島屋屋上のビアガーデンに設置したところ、酔客にウケて好評を博したのですが、
ハンマーを自分の足に落としたり、ハンマーをゴム部に当てず空振りして、
肩を外すお客さんが救急車で運ばれることがよくありました。
また、打撃音や振動を抑えるために、畳を機械の下に敷いたら、
それらが濡れて腐り、異臭が漂ったりしました。
それでも何とか続けていると、階下の衣料品売り場から、
「振動と音がうるさくて、お客さんが落ち着かない様子です。」との声が上がり、
ついに好評のイベントは幕を閉じました。
それからというもの、楠野では、ハンマーゴングは頼まれても一切作らなくなりました。
プライズゲーム・バーバーカットやファンファンタジアを作っているほうが
楽ということです。
■■□―――――――――――――――――――□■■
有限会社楠野製作所
【住所】 〒559-0025 大阪市住之江区平林南2-10-41
【電話番号】 06-6681-6116
21/12/27
21/06/14
21/04/28
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開発者 楠野博美
地方博覧会が華やかかりし頃、少しダイナミックな(ほとんどが集団で遊ぶ)ゲーム、
例えば皿割り、カンアレイ、水鉄砲、バスケットボールなどの、
幅広のカーニバルゲームが幅を利かす中で、異端児的な上下に3.5Mの長さを持った
「ハンマーゴング」というカーニバルゲームを作る依頼を受けて、
製作に取り掛かったことがあります。
木材と鉄を加工して組み上げればいいだけの、カンタンゲームと
思って気軽に引き受けてしまいましたが、
現実はそんなに甘くはありませんでした。
・まず一番高いところに取り付ける鉄製のゴングの呼び方が
分かりませんでした。ネットで調べられるような時代じゃなかったし、
板金加工所に電話を幾つか掛けてみて、それが鏡 板と呼ばれるものと
分かるまで時間が掛かりました。
・ハンマーも、杭打ち用の大槌であることが間もなく判明しました。
・シーソー構造の端の一旦をハンマーで打撃すると、反対側の先端に固定された30mm幅
の鉄製の板に弾かれて、レールを抱えるように上昇する鉄の塊を、一体何と呼んだらい
いのか分からず、仕方がないので、最後までタマと呼んでいました。
・シーソー運動の支点軸になっている金具は支点金具と呼ぶようにしました。
最初カンタンそうに見えたとおり、試作品はこれといった問題もなく楽に作れました。
ところが、試しに打撃用ゴムをハンマーでガツンと叩いて、先端の金属板で
タマを打ち上げたところ、思いのほか摩擦抵抗によって上昇しませんでした。
何とかタマの内側をヤスリで磨き、スムーズに上昇するようにしましたが、
次には先端部固定板が打撃を繰り返すうちに、下に曲がってお辞儀をするように
なりました。
「そうか、なまくら(鈍)のままでは軟らか過ぎるのか。」と反省して、
固くするために鉄工所に持ち込んで焼きを入れてもらいました。
そして今度こそ焼きを入れた打ち上げ板が、タマを勢いよく
上に弾くのかと期待した瞬間でした。「パッキーン」と音を発して、
無残にも折れました。これはかなりショッキングな事件でした。
「焼きを入れて固くしたら、折れやすくなってしまった。」しばらくこの状態から
抜け出す解決策が見いだせないままでいると、当社を覗きに来た金物屋さんが、
「鋼材を使ったら簡単には折れませんよ。」と教えてくれたおかげで、
あっけなく問題は解消しました。そのおかげをもって、ついに試作機が
誕生しました。それに商品化すると、割と好評でした。
しかしながら、このハンマーゴングのように予期せぬ問題が良く起きる機械は、
商品になっても、往々にして何らかのトラブルに見舞われるもので、
高島屋屋上のビアガーデンに設置したところ、酔客にウケて好評を博したのですが、
ハンマーを自分の足に落としたり、ハンマーをゴム部に当てず空振りして、
肩を外すお客さんが救急車で運ばれることがよくありました。
また、打撃音や振動を抑えるために、畳を機械の下に敷いたら、
それらが濡れて腐り、異臭が漂ったりしました。
それでも何とか続けていると、階下の衣料品売り場から、
「振動と音がうるさくて、お客さんが落ち着かない様子です。」との声が上がり、
ついに好評のイベントは幕を閉じました。
それからというもの、楠野では、ハンマーゴングは頼まれても一切作らなくなりました。
プライズゲーム・バーバーカットやファンファンタジアを作っているほうが
楽ということです。
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有限会社楠野製作所
【住所】
〒559-0025
大阪市住之江区平林南2-10-41
【電話番号】
06-6681-6116
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