記憶に残る猛者たち
開発者 楠野博美
私が「昔はよかった」と思うことの一つに、アミューズメントの 業界にも気骨のある営業マンが、当時何人かいたという思い出が あります。 その中で思わず感心して、うなった話を二つばかり紹介します。
<エピソード1> 1996年前期、自動循環式のスマートボールの「ファイター16」という
機械を楠野で作ったものの、なかなか売れずに困っている時に、 そのファイター16をどこかのゲームセンターで見て
感動したというゲーム関係の社長が、楠野製作所を尋ねてきてくれました。 社長は経営者としての手腕もあり、また営業マンとしても行動的でした。
【ファイター16】
「お客さんを遊ばせる上で、こんな好都合な機械が売れないなんて この業界はどうかしてるなあ」なんて言いながら、すぐさま20台くらいの 在庫を買い取ってくれました。積極的に機械を買い取った理由は、 「楠野のゲーム機が景品よりは遊びを重視している」ことであり、
「私自らが好きなタイプのスマートボール機だったから」という
社長の言葉でした。 私がびっくりしたことはまだ他にもありました。それは、
社長の言葉の中には、「売上」という言葉がどこにも出て来ずに、
「こりぁ子供たちが喜ぶわー」を連発されたことでした。
「社長は、本当に自分の職業を楽しんでいるなあ」と
ほとほと感心させられました。
<エピソード2>
先のお話の社長は、ファイター16に気をよくして、 「今度はボウリングをモチーフにしたスマートボールを作りたい」と、
自社に試作を依頼してくれました。私は即座に試作を引き受け、 割と速い期間で完成させました。その機械名は「キッズボウル」でした。
社長は試作機に納得し、量産に掛かるようにと、注文を入れてくれたのと同時に、 キッズボウルの販売代理店選びまで抜かりなく行っていました。
そんな時に、エピソード2の主役たる営業マンF氏が現れたのです。 「楠野に何か売れるものはないか」というノリで、当社を 尋ねてきてくれたのでした。
【キッズボウル】
F氏は丁度開発したばかりのキッズボウルを発見するや否や、
「これはいい、この新型機をうちの会社で扱わせてほしい。
独占で、販売を任せてほしい。」とまで言われました。 そして、そのためなら、試作機を、現在権利を持っている会社から買い取っても いい」と言いながら、倍ぐらいの金額提示を行ってくれました。
これには面喰いましたが、一応、無理な話と思いながらも、権利者の
社長に話を通してみましたが、案の定、駄目でした。 結局はこの話は成立せず流れてしまったのですが、そのF氏に私は、
そんなにもこのスマートボール機に執着する理由は何なのかを
聞いてみました。
試作機を試しもしないで、一見しただけで、なぜ多額の投資が約束できるのか、
このF氏の考えを知りたくなったのです。
そうしたら、彼は淡々と話してくれました。
「ゲーム機のことはよく知っている。この機械は一目見て、
売れると分かった。もし、売れなかったら、自分の力が足りなかったと納得
できる。」ということで、自分が見初めた機械の売れない理由を、決して
機械のせいにしない人でした。。
彼の言葉や態度には、覚悟や自信がみなぎっていました。 結局、この人物にはそれ以降、縁を持つことはなかったのですが、 彼の格好良い言動は、今も記憶に残っています。
今はもう見られなくなった、記憶に残る猛者たちでした。
■■□―――――――――――――――――――□■■
有限会社楠野製作所
【住所】 〒559-0025 大阪市住之江区平林南2-10-41
【電話番号】 06-6681-6116
21/12/27
21/06/14
21/04/28
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開発者 楠野博美
私が「昔はよかった」と思うことの一つに、アミューズメントの
業界にも気骨のある営業マンが、当時何人かいたという思い出が
あります。
その中で思わず感心して、うなった話を二つばかり紹介します。
<エピソード1>
1996年前期、自動循環式のスマートボールの「ファイター16」という
機械を楠野で作ったものの、なかなか売れずに困っている時に、
そのファイター16をどこかのゲームセンターで見て
感動したというゲーム関係の社長が、楠野製作所を尋ねてきてくれました。
社長は経営者としての手腕もあり、また営業マンとしても行動的でした。
【ファイター16】
「お客さんを遊ばせる上で、こんな好都合な機械が売れないなんて
この業界はどうかしてるなあ」なんて言いながら、すぐさま20台くらいの
在庫を買い取ってくれました。積極的に機械を買い取った理由は、
「楠野のゲーム機が景品よりは遊びを重視している」ことであり、
「私自らが好きなタイプのスマートボール機だったから」という
社長の言葉でした。
私がびっくりしたことはまだ他にもありました。それは、
社長の言葉の中には、「売上」という言葉がどこにも出て来ずに、
「こりぁ子供たちが喜ぶわー」を連発されたことでした。
「社長は、本当に自分の職業を楽しんでいるなあ」と
ほとほと感心させられました。
<エピソード2>
先のお話の社長は、ファイター16に気をよくして、
「今度はボウリングをモチーフにしたスマートボールを作りたい」と、
自社に試作を依頼してくれました。私は即座に試作を引き受け、
割と速い期間で完成させました。その機械名は「キッズボウル」でした。
社長は試作機に納得し、量産に掛かるようにと、注文を入れてくれたのと同時に、
キッズボウルの販売代理店選びまで抜かりなく行っていました。
そんな時に、エピソード2の主役たる営業マンF氏が現れたのです。
「楠野に何か売れるものはないか」というノリで、当社を
尋ねてきてくれたのでした。
【キッズボウル】
F氏は丁度開発したばかりのキッズボウルを発見するや否や、
「これはいい、この新型機をうちの会社で扱わせてほしい。
独占で、販売を任せてほしい。」とまで言われました。
そして、そのためなら、試作機を、現在権利を持っている会社から買い取っても
いい」と言いながら、倍ぐらいの金額提示を行ってくれました。
これには面喰いましたが、一応、無理な話と思いながらも、権利者の
社長に話を通してみましたが、案の定、駄目でした。
結局はこの話は成立せず流れてしまったのですが、そのF氏に私は、
そんなにもこのスマートボール機に執着する理由は何なのかを
聞いてみました。
試作機を試しもしないで、一見しただけで、なぜ多額の投資が約束できるのか、
このF氏の考えを知りたくなったのです。
そうしたら、彼は淡々と話してくれました。
「ゲーム機のことはよく知っている。この機械は一目見て、
売れると分かった。もし、売れなかったら、自分の力が足りなかったと納得
できる。」ということで、自分が見初めた機械の売れない理由を、決して
機械のせいにしない人でした。。
彼の言葉や態度には、覚悟や自信がみなぎっていました。
結局、この人物にはそれ以降、縁を持つことはなかったのですが、
彼の格好良い言動は、今も記憶に残っています。
今はもう見られなくなった、記憶に残る猛者たちでした。
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有限会社楠野製作所
【住所】
〒559-0025
大阪市住之江区平林南2-10-41
【電話番号】
06-6681-6116
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