記憶に残る猛者たち

有限会社楠野製作所

記憶に残る猛者たち

スタッフブログ

2019/07/01 記憶に残る猛者たち

開発者 楠野博美

私が「昔はよかった」と思うことの一つに、アミューズメントの
業界にも気骨のある営業マンが、当時何人かいたという思い出が
あります。
その中で思わず感心して、うなった話を二つばかり紹介します。

<エピソード1>
1996年前期、自動循環式のスマートボールの「ファイター16」という

機械を楠野で作ったものの、なかなか売れずに困っている時に、
そのファイター16をどこかのゲームセンターで見て

感動したというゲーム関係の社長が、楠野製作所を尋ねてきてくれました。
社長は経営者としての手腕もあり、また営業マンとしても行動的でした。

【ファイター16】

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「お客さんを遊ばせる上で、こんな好都合な機械が売れないなんて
この業界はどうかしてるなあ」なんて言いながら、すぐさま20台くらいの
在庫を買い取ってくれました。積極的に機械を買い取った理由は、
「楠野のゲーム機が景品よりは遊びを重視している」ことであり、

「私自らが好きなタイプのスマートボール機だったから」という

社長の言葉でした。
私がびっくりしたことはまだ他にもありました。それは、

社長の言葉の中には、「売上」という言葉がどこにも出て来ずに、

「こりぁ子供たちが喜ぶわー」を連発されたことでした。

「社長は、本当に自分の職業を楽しんでいるなあ」と

ほとほと感心させられました。

<エピソード2>

先のお話の社長は、ファイター16に気をよくして、
「今度はボウリングをモチーフにしたスマートボールを作りたい」と、

自社に試作を依頼してくれました。私は即座に試作を引き受け、
割と速い期間で完成させました。その機械名は「キッズボウル」でした。

社長は試作機に納得し、量産に掛かるようにと、注文を入れてくれたのと同時に、
キッズボウルの販売代理店選びまで抜かりなく行っていました。
 

そんな時に、エピソード2の主役たる営業マンF氏が現れたのです。
「楠野に何か売れるものはないか」というノリで、当社を
尋ねてきてくれたのでした。

 

 

【キッズボウル】
eremeka_product_pic_08-2

F氏は丁度開発したばかりのキッズボウルを発見するや否や、

「これはいい、この新型機をうちの会社で扱わせてほしい。

独占で、販売を任せてほしい。」とまで言われました。
そして、そのためなら、試作機を、現在権利を持っている会社から買い取っても
いい」と言いながら、倍ぐらいの金額提示を行ってくれました。

これには面喰いましたが、一応、無理な話と思いながらも、権利者の

社長に話を通してみましたが、案の定、駄目でした。
結局はこの話は成立せず流れてしまったのですが、そのF氏に私は、

そんなにもこのスマートボール機に執着する理由は何なのかを

聞いてみました。

試作機を試しもしないで、一見しただけで、なぜ多額の投資が約束できるのか、

このF氏の考えを知りたくなったのです。

そうしたら、彼は淡々と話してくれました。

「ゲーム機のことはよく知っている。この機械は一目見て、

売れると分かった。もし、売れなかったら、自分の力が足りなかったと納得

できる。」ということで、自分が見初めた機械の売れない理由を、決して

機械のせいにしない人でした。。

彼の言葉や態度には、覚悟や自信がみなぎっていました。
結局、この人物にはそれ以降、縁を持つことはなかったのですが、
彼の格好良い言動は、今も記憶に残っています。

今はもう見られなくなった、記憶に残る猛者たちでした。

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